
T所さんがご自宅で大変素晴らしい模写を描かれました。ルーブル美術館所蔵・アングルの「グランド・オダリスク(部分)」です。実に丁寧にしっかりと仕上げました。このような古典絵画の模写は、大変に画力がつく仕事です。普段の制作では見えない部分が見えてきて、過去の巨匠達も例外なくチャレンジしています。

顔の表情を掴みましたね。肌色の幅が豊富ですし、影の色もとても丁寧です。バックの効果もよく出ています。

ターバンの質感も見事ですね。布地の手触りまで伝わって来そうです。

肩から腕にかけての滑らかさが出ました。背中の量感がもう少し出れば上半身の厚みを感じられると思います。

顔のアップです。カンヴァスの布目を生かしているのが分かります。古典絵画の技法に乗っ取っています。目や口のディテールも丁寧です。

髪飾りの雰囲気もしっかり捉えていますね。隅々まで手を抜いていません。なのでとても説得力のある画面になりました。

今回の模写の元になった図版です。かなり正確に模写できているのが分かりますね。

参考までに、アングル「グランド・オダリスク」の全体像と解説です。
「グランド・オダリスク」(La Grande Odalisque) 1814年
91×162cm 油彩・画布 ルーヴル美術館(パリ)
新古典主義最後の巨匠ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングルが34歳の時に描いた代表作『グランド・オダリスク』。主題は当時流行したオリエンタル趣味≪オダリスク≫で、皇帝ナポレオンの妹であるナポリの王妃カロリーヌの依頼により描かれたが、制作途中で帝政が崩壊した為、数年の後に画家自身の手によってサロンへ出品された経緯を持つ。女性美を輝く肌と優雅な曲線を用い、デフォルメされた抽象的表現で描かれた本作だが、発表時は調和や統一性、形式美、理知などが尊重された時代だった故、そのいびつな背中と伸びきった腕を持つ裸婦の姿に、当時の評論家から多大な非難を受けたものの、人体構造的にはあり得ない伸びきった背中や太過ぎる腰・臀部・大腿部は、アングルが美を追求した末に辿りついた表現として、現在は同画家の大きな特徴として認識されている。画家は若い頃、修行で訪れたローマでルネサンス芸術に触れ、特に巨匠ラファエロの影響を強く受け、この裸婦の顔つきもラファエロの傑作「若い婦人の肖像(ラ・フォルナリーナ)」の影響と思われる表現が本作には用いられている。
これからのT所さんの制作がますます楽しみになる模写になりました!