只今、国立新美術館と、サントリー美術館の2会場で同時開催中の「ピカソ展」 を観て来ました。
アトリエヒュッテの会員さんも、何人かは行かれたと思います。
詳しい内容や期間等はHPを参照して頂くとしまして。
まず新美術館の方から観ました。相模大野からだと乃木坂に行くのはとても便利です。
これは参考図版で、展示はされてません。ピカソの分析キュビスムの傑作”MA JOLIE"(1912)です。
約170点もの作品が来日しており確かに圧巻でした。しかも「アヴィニョンの娘たち」の時代(初期キュビスム)、分析キュビズムの作品が多く来ています。私にとっては1990年にスイスのバーゼル美術館で観た「ピカソとブラック・キュビズムの時代展」を思い出す作品群でしたね。「三人の女のための習作」や正方形の「木陰の3人の人物」はやはり大傑作の1つだと思います。
この時代のピカソは一見激しい変化を遂げた様に見えますが、じっくり画面を見るととても冷静に実験を繰り返しているのが分かります。茶系の色もほんのり青や緑が入ったりして美しいんですよね?。総合キュビスムという名でくくられがちなコラージュ作品も魅力的です。解説では、分析キュビスムで解体があまりに進んで現実との関わりがわかりにくくなったので、コラージュ技法を用いてまた新しい現実と関わる方法を編み出した・・・みたいな事が書いてありましたが細かい分析キュビスムとはまた別の、もっと直接的なダイレクトなキュビスムを考えたって所だと思います。分析キュビスムは、特に人物を解体したものはどれだけ細かく分析しても、量感があります。
鉄板や板で実際に立体として作ったキュビスム立体作品がありましたが、本当に3次元で作ってしまうといまいちな・・・感じです。やけに高?いところに展示してあった有名な面的彫刻「ヴァイオリン」も、キュビスム絵画を理解する為には役立ちますが、まあ、そういったような作品です。
その後、新古典主義やミノタウロスや晩年や・・・もちろん「オルガの肖像」などは見事な絵画ですが年齢を重ねると共に情熱的・感情的になっていくのがピカソの特徴です。そういった意味ではキュビズムの時代は彼の絵画人生では例外的な9年間だったのかもですね。その9年は美術史上では100年以上に匹敵する変化です。
サントリー美術館の方は展示方法がよくなかったです。会場が暗い上にガラス張りのでっかいケースの中にさらに作品があり。。。自分の姿や回りがガラスに反射してこれは見にくい。作品数も新美術館よりはぐっと減って約60点でした。ピカソの自画像にテーマを絞ったそうですがあんまりそうにも見えず。シュルレアリスム風?や戦争がテーマの絵が多くあり、有名な「朝鮮の虐殺」も見られます(新美術館の会場です。大阪万博にも来た様な)。ピカソの戦争画と言えば誰でも「ゲルニカ」を思い出しますが戦争とか闘牛とピカソを関係付けすぎるのもどうかと。ピカソ程の巨匠になればスペインって国との関係を強調しすぎるのではなくやっぱり歴史かな。
ピカソは様々な20世紀美術の先駆者ではありますがなにか1つの表現を貫くということもありませんでした。幾何学的抽象主義者も、シュルレアリストも、多くのヒントをピカソから得ましたが「非現実」をモットーに追求したのが共通しています。しかし当のピカソ本人はいつでも「現実」へと回帰したのでした。
初期のゴットリーブは明らかに「エチュード(習作)1920」のような絵を参考にしています。
などということを色々考えながら鑑賞するにはもってこいの展覧会です(笑)。
でも、わざわざ2会場に分けて入場料を高くすることもないのでは・・・。全作品を「新美術館」に展示してもよかったよねえ・・・。
いよいよ12/14までですのでお時間ある方は是非おすすめです!