マムマムさんの新作油彩画のご紹介です。
今期の大モチーフです。
F12サイズという大きめのカンヴァスに展開されたこの油彩画は、静物と象徴、そして抽象的な構造が緻密に絡み合う、非常に詩的かつ哲学的な作品です。以下、構成・技術・象徴性・印象の観点から批評を試みます。
構成と視線の導線
• 中央の葡萄と芍薬が視線を引きつけ、生命力と豊穣の象徴として画面の核を担っています。
• 籠の果物と陶器が下部に配置され、重心を安定させつつ、物質的な豊かさと日常性を暗示。
• 右上の網とお皿は、視線を上方へと導き、思考・時間・宇宙的視点へと飛躍させます。
このように、画面は「地に足のついた静物」から「抽象的な精神領域」へと視線を誘導する構造になっており、観る者の内面の旅を促します。
技術と質感
• 葡萄の透明感と芍薬の柔らかさは、筆致と色彩の層によって巧みに表現され、油彩ならではの深みがあります。
• 陶器の質感と布の模様は、細密描写と陰影のコントロールによって立体感が際立ち、触覚的な魅力を放っています。
• 背景の幾何学線と羽根は、抽象性と動きを加え、静物の世界に時間や風の気配を吹き込んでいます。
象徴と物語性
• 葡萄と芍薬は古来より「豊穣」「愛」「儚さ」の象徴。ここでは生命の美しさと一瞬性が重ねられているようです。
• 壁のお皿は、時間・運命・個人の位置づけを示唆。特に「19」「98」は転換点や境界の象徴の年して興味深いです。
印象と余白
この作品は、静物画の形式を借りながらも、「時間」「声」「存在の構造」といった抽象的テーマを内包しています。特に、自然物と人工構造の対比が、現代における人間の位置や感覚の変容を問いかけているように感じられます。
また、背景の深いマルスバイオレットが全体を包み込み、静けさと深層心理への誘いを演出していますね!
次回のマムマムさんの作品も楽しみです!





