アトリエヒュッテのイベント

クサカベ工場見学と絵具作り実習の旅 その2

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2015年11月2日(月)、(株)クサカベ工場見学と絵具作り実習のバスツアーを開催しました!
絵画制作で使っている絵具、いつも何気なく教室のものを使ったり画材屋さんで購入したりしますが、これはどこでどのように造られているかを考えたことがありますか? 
いつもの制作とは視点を変えて、画材の観点から勉強をしてみるのはとても重要です。
というわけで、大手絵具メーカー、クサカベ絵具工場見学と絵具作り実習の様子をご紹介したいと思います。
前回は工場見学の様子をお伝えしたので、今回は第2弾、「絵具作り編」です!工場見学から戻ってきて再び実習室へ。
既に準備の整った講習室の机に着席します。
 
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まずは絵具作りの専門家である株式会社クサカベ技術開発部の西田先生から、作り方の説明があります。
 
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お手元には資料「油絵具のできるまで」が配布されております。
 
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広々とした講習会室です。
ここで講義が受けられるのは大変幸せなことだと思います。
 
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絵具についての基礎知識のお話です。
絵具は、色を発生する成分「色素」と、固着させる成分「バインダー」から成り立っています。
色素は、顔料と染料に分けられますが、保存性を重視する絵具では、ほとんどの場合に顔料が用いられます。
油絵具をはじめ水彩絵具、アクリル絵具、テンペラ絵具等には、ほぼ共通の顔料が使用できます。
色を性格づけるのが顔料であるのに対し、絵具の性質を決定づけるのがバインダーです。
つまり展色材とは顔料を画面に定着させる固着材(バインダー)と溶剤からなります。
簡単に言うと、顕色材は色の粒で、それを画面にくっつけるノリの役割が展色材ということです。
 
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絵具には、油絵具・水彩絵具・アクリル絵具など、様々な種類があります。 
しかしその全てに顔料が使われているという共通点があります。
では何が違うのかというと・・・、展色材、つまりノリの役割を果たす物の種類が異なるのです。
油絵具の場合は、多くは亜麻仁油(リンシードオイル)。
水彩絵具はアラビアゴム。アクリル絵具はアクリルエマルジョンです。
 
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本日はウルトラマリンかイエローオーカー、油絵具か水彩絵具から選びます。
先生のお手本実習ではウルトラマリンの水彩絵の具を制作します。
平らな石の台にのせたウルトラマリンの顔料の山に窪みを作り、そこにアラビアゴム水彩メディウムを垂らします。
 
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パレットナイフでよく練ります。
艶が出てきました。
 
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さらに練ってトロトロになってきました。
 
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次に絵具を少量ずつ、ガラス製のすり棒で押しながら円を描くように研磨していきます。
それにより色に輝きが生まれ、着色力も強化されます。
工場では3本ロールミルで行っていた作業工程を手動でやるわけです。
昔の画家は毎回こうやって絵具を作っていました。
 
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出来た絵具をチューブに詰めていきます。
空気の抜けを良くする為ににチューブの蓋をゆるくして、後ろの方から少しずつゆっくりと詰めていきます。
 
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大分入れられました。
 
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チューブいっぱいに絵具を詰めたら、手前の機械でチューブのお尻を、きゅっきゅっと折り曲げて閉めます。
それで完成です!
 
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さていよいよ私たちの番です!
イエローオーカーチーム、ウルトラマリンチームに分かれての製作です。
殆どの方が油絵具ご希望で、水彩は3名様のみでした。
 
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慎重に顔料をプラスチック板に乗せていきます。
 
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こちらはウルトラマリンチームです。
 
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顔料を丁寧にパレットナイフで伸ばしていきます。
 
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水彩絵具製作のゆりこ先生と俊介。
 
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楽しそうにOILを足していきます(笑)。
 
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顔料の量が多いので練るのが大変ですね。
 
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丁寧にリンシードオイルでイエローオーカーの顔料を練るますみちゃん。
 
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パレットナイフで練った絵具を台の右上に置き。
中央でガラスすり棒で研磨したら左上に移動、その作業を繰り返します。
 
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そろそろチューブに詰める人も出てきました。
油絵具は直接チューブに入れないで、パラフィン紙のようなものでコーティングしたチューブに入れます。
すべりをよくしないと入っていかないからです。
水彩絵具はトロトロなのでその必要はありません。
 
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ウルトラマリンチーム、絵具はほぼ完成です。
 
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株式会社クサカベ技術開発部の小川先生のご指導が入ります。
 
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水彩チームも完成です。
俊介君、トロトロのウルトラマリン水彩絵の具ができました。
小川先生から「優秀です!」と褒められていました(笑)。
 
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時間がかかっているイエローオーカーチームです。
最後まで頑張ります!
 
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ほぼチューブに詰め終わりました。
 
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いよいよチューブのお尻を機械で止めていきます。
 
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完璧と言っていい出来栄えではないでしょうか。
 
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私も最後まで頑張りました!(笑)赤矢印が私の作品です。
きなちゃんはもうチューブに詰めていますね。
 
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ますみちゃんも頑張って絵具の研磨をしています。
この後、無事に完成できました。
 
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記念写真です。
工場見学と絵具作り実習という盛り沢山な内容で、本当に良い経験をさせて頂きました。
(株)クサカベの社長様をはじめ、技術開発部の小川様、西田様、その他スタッフの皆様、本当にお世話になりました。
ありがとうございました!
今日の経験で絵具に対する認識が深まり、ますます大切に、頑張って絵を描こうという意欲が湧いてきました。
これからも頑張ります!
  
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これが本日作った絵の具です。
世界に1本しかない、まさに宝物の絵の具チューブです!
 
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ところで、クサカベさんはカンボジアの子どもたちに絵の具をプレゼントしているということで、工場内ではその支援を受けた人たちの絵が飾られ、販売されていました。
私も気に入った作品2点を購入させていただきました。
これはそのうちの1点でミトナー・ドーン君(14歳)の作品です。
感覚豊かな作品です!
 
さて、今回ご参加の方々より本日の感想を頂きましたので、最後にご紹介します!
 
 

 
(ますみちゃんの感想)
 
工場見学に関しては、実際の作業現場を間近で見ることが出来て、貴重な体験でした。
説明員の方の説明の他に、実際に作業をされてる方も、私たちの質問に丁寧に答えてくださいました。
ひとつひとつの工程の大事さが伝わりました。
 
絵の具作りの実習では、チューブ1本分の絵の具をつくることにあたふたしながらも、艶やかな絵の具が見えてくるたびに、もう一練りしよう、と頑張りました。
 
私の当初の予想よりも、工場では人の手による作業が多く感じました。
意外だったなぁという気持ちも、実習を通して納得しました。
ひとつひとつの工程を人間の目で丁寧に確認して作られているからこそ、完成した絵の具も私たちが美しい発色と感じられるのだと思います。
 

 
(ストーンさんの感想)

クサカベ工場見学記
 
私の人生において、絵の具を作っている工場を見学する機会が来るとは思ってもみませんでした。が、申し込んだ後、私には漠然とした期待が有りました。
当日(11月2日)の朝、いつにない激しい雨の中、バスを待つ集合場所の伊勢丹前にヒュッテの顔ぶれが揃うと、期待感はさらに増しました。
道路は混んでいて、少し遅れての到着となりました。
バスが到着した「クサカベ」絵の具の会社は予想したよりもこじんまりとしていました。案内された3階の講義室には小屋哲雄先生や幾人かの人の作品が飾られ、クサカベの製品が並ぶ清潔な工房になっていました。私たちはこの部屋で絵の具作りを体験しました。
しかし、その前に工場見学がありました。案内された裏の建物は大きな製品置き場になっており、さらにその裏には町工場を思わせる作業場が絵の具作りの工程に従って配列されていました。案内の女性の丁寧な説明と幾つかの機械と向き合う人たちの作業を見ていてその丁寧さに感心しました。工程ごとに配列されたそれぞれの特色ある機械の精密さとその精密な機械と向き合う作業を見ていると、作業には熟練度と専門性が求められることが分かりました。どれも根気と熱意のいる仕事だと思いました。
その過程の一つひとつ(1.材料を混ぜ合わせる・ミキサー。2.絵具を練り上げる・ロール。3.安定した品質を保つ・品質チェック。4.より美しい発色のための・熟成。5.チューブに詰める・充填。6.箱に詰める・完成)を経て完成した製品となるのです。その製品がさらに倉庫の恒温室と呼ばれる部屋に保管されているのを見た時、クサカベ製品の持つ誠実さを感じました。
最近、立て続けに起こる大手企業の不祥事(手抜きやごまかし)に驚き、不愉快な思いを味わっていた私は一服の清涼剤を飲む思いでした。世界的に高い評価を受けている日本製品の持つ良質さが、「クサカベ」のような会社に働く人たちの 誠実さに支えられているのを感じました。
その後、先ほどの部屋に戻り、各自、自分の絵の具作りを体験しました。私はイエローオーカーを作りましたが、先ほどの1.2.5.の作業をテーブルの上に用意された道具を使ってする手作業でした。出来た絵の具をチューブに移し、最後にチューブに製作者として自分の名前を書いたラベルを貼ってもらった時はなんとも言えない充足感がありました。参加者全員が同じ気持ちを味わったに違いありません。後片付けの間も弾んだ声が飛び交っていました。
会社「クサカベ」はカンボジアの子どもたちに絵の具をプレゼントしているということでした。その支援を受けた人たちの絵が一角に飾られ、販売されていました。販売代金の半分はカンボジアの製作者たちの収入になるということで、残りはこういう支援制度の充実に当てられているとのことでした。先生から配られたチラシには「カンボジアの子どもたちが描くハスの絵展」(11月7日~15日・玉川学園ギャラリー「季の風」)が紹介されていました。
最後に記念撮影をして帰路につきました。そのバスの中で開いた私のフェイスブックには、沖縄の軍事基地に反対し、自分たちの生活を守ろうとする地元住民や支援者とそれを排除する警察の姿がアップで映し出されていました。
沖縄住民の負担を軽減すると言いつつ、自然と暮らしを壊す軍事基地反対の切実な声(願い)を無視する政府の不誠実な姿がそこにありました。
日本は何処へ向かうのかの複雑な思いと重ねて、今日のクサカベ工場見学の意義を改めて考えました。
 
2015年11月2日記
 

 
(KYOさんの感想)
 
絵の具工場「クサカベ」見学                       
 
 11月2日、朝から冷たい大雨、もっとテルテル坊主を作ればよかったかな!

でも、バスで社会科見学なんて何年ぶり?嬉しいな♪~
 
 Iさんからの「お菓子詰め合わせ」が回ってきたのをきっかけに、次々お菓子が回ってき

た~、「Trick or treat!」と言わなくてもこんなに頂けちやいました!

 食べたり喋ったりしているうちにクサカベとうちやこ! 一休みして、工場へ。まずは

作業工程を見学。オイルと炭酸カルシウム、顔料とを合わせて大きなミキサーで粗練りす

る。続いて、大きくてゆっくり動いている3個セットのローラーにかけて、なめらかにな

めらかにしていく。一回に約800本の絵の具が作れる位の量の材料をローラーにかける。

滑らかでツヤも出るように、3回から5回ローラーにかけるとの事。今回は、「ジャングル

グリーン」という名前の絵の具を作っていました。今度、どこかの画材屋さんで「クナカ

ベのジャングルグリーン」を見つけたら、きっと今日の日のことを思い出すでしょう。

 出来上がった絵の具を大きなマスのような物の中に入れ、自動で回っていくチューブの

中に絵の具を入れて行きます、絵の具が一定量入ると次は底を閉じ、名前の書かれたラペ

ルが貼られていきます。ここまでは、オートマチックに動いていますが、最後は女性の方

が手作業で箱に詰めていきます。こうして1本20g入のクサカベの絵の具が出来上がり

ました。

 講習室に戻り、いよいよ「マイ絵の具」を作ります。誰も手伝ってくれません、工場で、

機械がやっていた工程をすべて自分でやるのです。顔料とオイルを混ぜ、少しずつこねて

練って、こねて練って………あ、出てきました、艶が!きれいなウルトラマリンです!こ

れをチューブの底から、紙で作ったジョウゴを通して、ヘラでまた少しずつ、垂らして入

れていく………わあ、難しい!「不器用なヤツですが」の私にはホントに難しい作業です。

それでも、手や腕をマリンカラーに染めて、やっと入れ終えました。底を重石で閉じてラ

ベルを貼ったら出来上がり!わ~い、マイ絵の具の完成です。

 やったことのない作業をお互いにたたえあい労って、みなさんの顔は満足気なニコニコ

顔!「来てよかったね~」「難しかったけど、おもしろかった!」

 作業中にも関わらず、質問に答えてくださったクサカベの社員の皆様、ありがとうござ

いました。また、この度はお忙しいのに、親睦と満足感満載の楽しい企画を立ててくださ

った先生方、ありがとうございました、参加してよかったです。絵の具、大切にします。

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